東京地方裁判所 昭和28年(行)38号 判決 1954年2月24日
東京都台東区浅草今戸三丁目一四番地
原告
山中和夫
右訴訟代理人弁護士
金綱正己
東京都台東区浅草蔵前三丁目二四番地
被告
浅草税務署長
伊藤正
右指定代理人大蔵事務官
国吉良雄
同
大滝浩
同
中里恒曠
右指定代理人法務省訟務局付検事
横山茂晴
同
法務事務官 堺沢良
右訴訟代理人弁護士
田中勝次郎
右当事者間の昭和二十八年(行)第三八号課税処分取消請求事件について、次のとおり判決する。
主文
原告の訴を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
原告訴訟代理人は「被告が昭和二十七年五月二十日付原告に対してなした、昭和二十六年度分所得税の総所得金額を金二十七万円と更正した決定のうち、金十五万円を越える部分を取消す。訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求め、請求原因として、また被告の本案前の答弁に対して、次のとおり述べた。
原告は、昭和二十六年度分の所得税について、被告浅草税務署長に対し、総所得金額を金十五万円とする確定申告書を提出したところ、被告は昭和二十七年五月二十日右総所得金額を金二十七万円に更正する旨の決定をし、これを原告に通知した。そこで原告は被告に対し再調査の請求をしたが、請求を棄却されたので、更に東京国税局長に対し、審査の請求をしたところ、同局長は昭和二十八年二月八日附で審査請求を棄却する旨の決定をした。原告は同年二月十三日右の棄却決定通知を受けた。
原告の前記確定申告書に記載した金額には誤りがないから、被告のした前記更正決定およびこれを維持した東京国税局長の審査決定は違法である、よつて被告のした更正決定のうち原告の申告額を越える部分の取消を求める。かように述べ、立証として、証人菊地原喜代の証言、原告本人尋問の結果を援用し、「乙第四号証の一、二が真正にできたことを認める。」と述べた。
被告代理人は、まず、原告の訴を却下する旨の判決を求め、その理由として、「東京国税局長の審査決定の通知が原告に到達した日は昭和二十八年二月八日である。しかるに原告が本訴を提起したのは同年五月十二日であつて、所得税法第五十一条第二項の三カ月の出訴期間を徒過しているのであるから原告の訴は不適法として、却下さるべきである。」と述べ、次に本案について、「原告の請求を棄却する訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、「原告主張の事実は、昭和二十六年度の原告の総所得金額が金十五万円であるという点及び審査決定通知の日が昭和二十八年二月八日であるという点を除いて認める。」と述べ立証として、乙第四号証の一、二を提出した。
理由
乙第四号証の一、二(真正にできたことに争いがない)と証人菊地原喜代原告本人の各供述を合せ考えると、東京国税局長は、原告に対する本件審査決定通知書を昭和二十八年二月七日発送し、右は同月八日原告に到達したことを認めることができる。証人菊地原喜代、原告本人の各供述中認定に反する部分は信用することができない。その他右認定を動かすに足りる証拠はない。
被告浅草税務署長のした本件更正決定の取消を求めるためには原告は右審査決定の通知を受けた日である昭和二十八年二月八日から三カ月の期間内に出訴すべきであつた(所得税法第五十一条第二項)。しかるに、原告が本訴を提起したのは昭和二十八年五月十二日であるから(記録上明らかである)原告の本件訴は、右出訴期間を徒過したものであつて、不適法である。
よつて原告の訴を却下し、訴訟費用の負担について行政事件訴訟特例法第一条民事訴訟法第八十九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 新村義広 裁判官 入山実 裁判官 川添万夫)